あらすじ〜『広島に原爆を落とす日』

『広島に原爆を落とす日』とは:はじめに

2010年、現代、広島。
新聞記者・山崎(筧 利夫)は、広島刑務所から釈放された。
5年前の殺人事件の罪を着せられた山崎の前に、当時の担当刑事、猪熊(武田義晴)が姿を現す。 「事件はまだ終わっていない」
山崎が5年前に調べていた外務省の密約文書に記された「犬子」の文字。その後、次々と起こる不可思議な事件。
刑事は山崎に「あんたは守られてんだよ」とつぶやく。
そして一人の老人が現れた。その老人は、謎の言葉を遺す。
「原爆を落としたのは、犬子という一人の日本人だ」
その瞬間、山崎の前に日本刀を手にした男が現れた。突如として襲 いかかってくる男に老人は殺され、山崎も追いつめられる。逃げ惑う山崎を匿ったのは、一人の女だった。
その女・今日子(山口紗弥加)は、外務省の特務課を名乗った。そして山崎に原爆投下の真実を突き止めるよう依頼する。山崎は、刑事の猪熊、新人記者木下(平沼紀久)の協力を得て、調査を開始することを決意する。
そして今日子が最初に山崎を誘ったのは、瀬戸内の沖合に浮かぶ島、髪島だった。

1941年、広島。
髪島の浜では、髪一族の末娘・百合子(仲間リサ)がドイツに向けて出港しようとしていた。
髪島に住む髪一族とは、かつて大罪を犯したために卑賎の身分に落とされた卑しい泣き女の一族であり、また許された間諜の一族でもあった。
百合子の使命は、アドルフ・ヒトラー(大口兼悟)にアメリカに対して宣戦布告をさせること。そして原爆が完成したときには、ドイツに落とさせるよう工作すること…。
過酷な任務に向かう百合子を、犬子恨一郎海軍少佐(筧利夫、二役)は憎々しげににらみつけていた。 恨一郎と百合子は、遠い昔に夫婦の約束を交わした仲だった。心から愛し、共に生きようと誓った仲だった。
だが、冷たい雨の降りしきる日、百合子は恨一郎を裏切り、去っていった。その日から、恨一郎は女を愛することをやめた。
出港を前に一度抱いてやれという、首相の重宗(山本亨)の言葉を振り切り、恨一郎は出港を告げる。
今や大佐となった百合子は、恨一郎に敬礼を求めると、厳しい目で問いかけた。
「…まだ私を愛してくれていますか?」
「…愛しています。一日もあなたのことを忘れたことはありません」
二人の仲を裂くように、百合子を乗せた潜水艦イー26号はドイツへと出港していった。
犬子は、北関東血盟団の平沼(馬場徹)を部下に迎え、真珠湾攻撃の指揮をとる事になる。

全ての記録から消された「犬子」の文字、謎の髪一族の存在、浮かび上がる真珠湾開戦の真実。
愛し合うが故に引き裂かれた、恨一郎と百合子の運命、何故二人は戦火の中、日本を敗戦へと導かねばならなかったのか。

日米密約を暴かれないために、米国務省ジェニファー・スニード(リア・ディゾン) が成田に降り立つ。そして、遂にあばかれる密約の真実。広島に原爆を投下した男とは…。

第二次世界大戦の裏側に潜む謎を解き明かす、つかこうへい渾身の傑作が、終戦から65年の時を超えシアターコクーンに蘇る。